MESSAGEメッセージ

なぜ人は学ぶのか…

 四書のひとつ、『中庸』の冒頭に、
「天の命ずる、これを“性”という」という言葉があります。

 

 人間には生まれながらに備わっているもの、すなわち「天性」があります。
これは、天が人間として生まれなさいと命じたときに、
これを持って行きなさいと授けてくれたものと考えられていました。

 

 生まれたばかりの頃、その人にどのような天性があるのか、わかりにくいものです。
しかし、成長にともなってそれらを発揚する、つまり明確にすることが大切です。
そして、天性を明確にするためにこそ「学び」があるのです。

 

 では、なぜ学び続ける必要があるのでしょうか。

 

 それをひとことで、「人生をより良く生きるため」と言えるでしょう。
人間が社会の一員として生きるためには、社会の中で何か自分の役割を担い、
それを果たすことによって感じる生き甲斐を得て生きていくことが肝要です。
その際、多くの他人とより良い人間関係を築くことのできる
「徳」がなければなりません。
その徳を磨くために学ぶと言ってもいいでしょう。

 

 人間にはもともと「惻隠の心」(困っている人を見て気の毒に思う心)、
「羞悪の心」(自己の不善を恥じ、他者の悪を憎む心)、
「辞譲の心」(譲り合う心)、
「是非の心」(道理にしたがって良い悪いと判断する心)という精神の基盤をなす
四つの要素があり、それらを「四端」といいます。
四端はやがて「仁義礼智」へと育まれていきます。
社会の中で自分の天性を発揮するには、この仁義礼智が非常に重要です。
なぜなら、他者(自分以外のすべての人間)と良好な人間関係を築くことなく、
それを果たすことは不可能だからです。

 

 私が主宰する「タオ・クラブ」では、
四端を仁義礼智に育むための学びの場と言い換えてもいいでしょう。
それはすなわち、「学び」によって社会を健全にしていく試みに
ほかならないと考えています。

田口佳史

田口佳史(たぐち よしふみ) PROFILE

1942年東京生まれ。東洋思想研究家。株式会社イメージプラン代表取締役会長、一般社団法人東洋と西洋の知の融合研究所所長。

大学卒業後、日本映画新社に入社。映画『東京オリンピック』ではチーフ監督を務めた。
25歳の時、バンコク市郊外の農村で撮影中、突然水牛2頭に襲われ瀕死の重傷を負うも奇跡的に生還。その入院中の老荘思想との運命的な出会いが、東洋思想研究家へと歩み出す契機となった。

「東洋思想(儒・仏・道・禅・神道を有機的に融合させた思想や哲学)」を基盤とする独自の経営思想体系「タオ・マネジメント(東洋思想的経営論)」を構築・実践、数多くの企業経営者と政治家を育て上げてきた。社会人教育に関しては、延べ1万名(2000社)を超える提供・支援実績を有する。

「人新世(Anthropocene)」の時代に突入しており、人類の知的財産ともいえる「東洋思想」をもってその危機緩和・回避の一助を提供すべく精力的に活動中。これまで掲げてきた理念(東洋と西洋の知の融合)をより高い次元に発展させ、「21世紀に相応しい世界のあり方」を国内外に提唱するものである。関連して配信中のニュースレターは、海外でも注目を集めている。

平成17年 教育改革の重要性を痛感し、教師養成の為の師範学校設立に参画する。
平成19年 21世紀の日本の在り方を探求する一般社団法人東洋と西洋の知の融合研究所を設立、理事長に就任。研修施設「玄妙館」完成、「TAO講座」「リーダー養成講座」「四書五経講座」等の定例講座を開始する。
平成20年 家庭教育の重要性を痛感し、親の子育て教本「親子で学ぶ人間の基本」(全12巻DVD)を発表する。
平成26年 我が国の歴史・伝統・文化を踏まえた21世紀のグローバルな人材育成を目指す「人格教養教育推進委員会」を発足する。
令和3年 ニュースレター:「人新世」の時代に-「東洋思想からの提言」を日本語・英語・中国語で配信をスタートする。【https://www.tao-club.net/newsletter/
令和4年 「東洋思想フォーラム」を開催。世界中に生じている歪みや軋みを改善するための将来に向けた取組み等について、建設的な議論・意見交換を実施。

【主な著書】

「中庸」講義録 2023年 致知出版社  
新・孫子の兵法 2022年 大和書房  
仕事で一生悩まないための菜根譚の教え 2022年 三笠書房  
論語と老子の言葉 2021年 大和書房  
渋沢栄一に学ぶ大転換期の乗り越え方 2021年 光文社  
『大学』に学ぶ人間学・『書経』講義録 2021年 致知出版社  
佐久間象山に学ぶ大転換期の生き方 2020年 致知出版社  
教養としての『貞観政要』講義 2019年 光文社  
横井小楠の人と思想 2018年 致知出版社  
超訳 孫子の兵法 2013年 三笠書房 他多数

【これまでの主な受講者】

富士ゼロックス、ソニー、富士通、バンダイ、ISL(インスティテュート・オブ・ストラテジック・リーダーシップ)、NEC、コンビ、日本銀行、サンエー・インターナショナル、AOKIホールディングス、バンダイロジパル、日本たばこ産業、ピジョン、ピップトウキョウ、リクルート、野村證券、九州・アジア経営塾、杉並区、鹿島建設、タマス、マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパン、丸の内ブランドフォーラム、三愛、三井物産、日立製作所、リコー販売、第一生命保険、富士製薬工業、慶應学術事業会、不二ラテックス、ニチバン、NTTドコモ、日本能率協会、三菱東京UFJ、慶應義塾大学、杉並区職員能力開発センター、野村アセットマネジメント、テルモ、東京電力、タナベ経営、IFIビジネススクール、日本生産性本部、日本経営協会など

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